瀬戸内国際芸術祭2010(1)瀬戸内のターミナル

今年は「瀬戸内国際芸術祭2010」(会期:7月19日〜10月31日)と「あいちトリエンナーレ2010」(会期:8月21日〜10月31日)という2つの意欲的な現代アートの祭典が繰り広げられています。そこで無謀にも空前の酷暑といわれるこの8月に瀬戸内‐名古屋を結ぶアートめぐりの旅を計画しました。
理由のひとつに、高松丸亀町商店街への関心がありました。中心市街地活性化の数少ない成功事例として全国から視察が絶えない商店街で、その成功要因は
①定期借地権設定により、地権者の所有権はそのままに利用権を放棄させる方法で、まちづくりの自由度を確保する。
②快適で暮らしやすいまちを市民に提供することで、人口流出を防ぎ、お金を地域で循環させる。
の2点といわれています。観光に頼らない開発「循環型のまちづくり」をうたう商店街が、今回のイベントとどのように関わるかにも興味がありました。
というわけで夏休みの終わりの日、私は10年ぶりに高松空港に降り立ちました。かつて1990年代に10年間にわたり高松の大手通販会社と企画コーディネート契約していた関係で、ほぼ毎週高松に出張していました。そして当時定宿にしていた全日空系の「高松グランドホテル」に代わった「全日空ホテルクレメント高松」に着いたとき、高松駅高松港周辺の変貌に驚きました。そこにはまさに「瀬戸内のターミナル」と呼ぶにふさわしい海に開けたウォーターフロントが出現していたのでした。
高松港で出発ゲートのようのようにそびえているのは大巻伸嗣の「Liminal Air-core」という作品です。おそらくリミナリティという「日常生活の規範から逸脱し、境界状態にある人間の不確定な状況をさす」言葉から来ていると思いますが、聞きなれない英語なんて無視して、鏡面仕上げの表面が景色を映しこんで変化する様子や、海を背景にした鮮やかな色使いに「アートと海を巡る冒険」という非日常への心躍らせる出発を重ね合わせ、期待感が盛り上がります。

瀬戸内国際芸術祭2010作品2:大巻伸嗣 Liminal Air-core

フェアトレード

修士論文のためのインタビュー第2弾は、フェアトレードピープル・ツリーに伺いました。日本専門店会連盟の月刊誌「専門店」に連載中の「ファッションマーケティング昨日・今日・明日」の取材も兼ねています。
経済性だけでなく、トリプルボトムライン(企業活動を経済面のみならず社会面及び環境面からも評価しようとする考え方)にいう社会面、環境面とのバランスのとれた商品を開発するという「持続可能な商品開発」という考え方を検証中なので、環境面からのアプローチとしてのオーガニックコットンに続いて、社会面からのアプローチとして「フェアトレード」をとりあげました。
はじめてフェアトレード・ファッションに出会ったのは、雑誌「ヴォーグNIPPON」の2007年6月号でした。ニューヨーク、ロンドン、東京のデザイナーとコラボしたピープル・ツリーのドレスやシャツが「フェアトレードがモードに生まれ変わる」という特集で紹介されていました。途上国とのフェアトレードは知っていましたが、シンプルな日常着ではなく、造形的なデザイナーブランドのフォルムが表現されていたのに驚きました。
ピープル・ツリーが目指すのは、商品を通じてフェアトレードの認知向上と普及による途上国の生産者支援です。そしてミッションには、フェアトレード普及のための商品力向上、啓蒙活動、ビジネスモデルとしての成功例となることを目標に加えています。
今年からは30代のコア・ターゲットに加えて、より若い人に「フェアトレード」を認知してもらう活動にも力を入れています。3月にイギリスの女優エマ・ワトソンとの特別コラボレーションによるコレクション「People Tree, Love from Emma」を発売し、日本でも19歳のエマと同年代の学生を中心にフェアトレードを広めるプロジェクト「School of Fair Trade(SoFT)」を始めています。8月6日も「激アツ祭2010」(東京・渋谷109)にて、高校生によるフェアトレード・ファッションショーを開催し、「School of Fair Trade」のメンバーがフェアトレードの活動紹介をするということで、インタビューの帰りにショーの取材もしてきました。

フェアトレード・ファッションショー「激アツ祭2010」(東京・渋谷109)

オーガニックコットン

修士論文のためのインタビューを始めました。
先日は株式会社アバンティに伺いました。オーガニックコットンの原綿から糸、生地までの一貫供給態勢を確立して、オリジナル製品ブランド「プリスティン」も展開する日本のオーガニックコットン普及の草分け的存在です。
通常のコットンの問題点は生産性を上げるため多量の農薬使用による、①環境汚染、②労働環境悪化、③地球温暖化にあるといわれています。
「オーガニック・コットン(有機栽培綿)とは、3年間農薬や化学肥料を使わないで栽培された農地で、農薬や化学肥料を使わないで生産された綿花のことです。紡績、織布、ニット、染色加工、縫製などの製造全工程を通じて、化学薬品による環境負荷を最小限に減らして製造したものをオーガニックコットン製品といいます。」(JOCA日本オーガニックコットン協会
通常のコットンと比べてオーガニックコットンが割高なのは、輪作によるローテーション、農薬・殺虫剤を使わないための除草や「ナナホシテントウムシ」による害虫駆除、メイドインジャパンのこだわりなど土作り・綿作り・生地作りにかかる手間と技術コストが原因です。しかしそれに見合う価値があること、安心・安全をささえる技術を継承する意味は価格や効率では換えられないことを伺いました。
オーガニックコットンの見た目も肌触りも気持ちよいほんわかとした自然色の世界は、価格以上の「満足」をもたらしてくれます。タオル地やガーゼ以外にも、ボア風の毛足の長い生地や、ブランケット、ループなど、その多彩な手触りの広がりに驚かされます。プレゼントにも最適なぬいぐるみやクッション、タオル類、布ナプキンが人気だそうですが、意外なところでは「さらし」が万能ぶりを発揮しているそうです。おしめ、手ぬぐい、ふんどし、手作りマスク、ふきんなど以外にも、「電子レンジのラップ代わり」というユニークな使用法もあるそうです。

人気のあるオーガニックコットン製品:株式会社アバンティ

緑のカーテン

今年から緑のカーテンにトライ中です。
1ヶ月前に植えたゴーヤの苗はすでに1m以上の高さになりました。午前中しか陽のあたらない東向きのベランダのせいか心持ち、ひ弱な感じですが、気のせいでしょうか?

2010年6月6日

2010年7月4日
緑のカーテンは、室温を4℃下げるということですが、開口部が6mもあるので80cm幅1本ではあまり効果は期待できないかもしれません。
心配なのは受粉をする蜂が飛んできてくれるかどうか? ミニバラが咲くと時々見かけるのですが、今年はまだ見かけません。
うまく実がなったらゴーヤ・パーティーをしたいと、早くもとらぬ狸の皮算用をしています。

デザインは世界を変えられるか

東京ミッドタウンアクシスギャラリーで開催中の「世界を変えるデザイン展」 を見てきました。
従来のデザインは美意識、機能、コストのバランスの上に、商品の付加価値としての役割を担ってきました。デザインは消費者の欲求を満たすために重要な要素です。ところが
「世界の全人口65億人のうち、90%に当たる58億人は、私たちの多くにとって当たり前の製品やサービスに、まったくといっていいほど縁がない。さらにその半分は、食料や、きれいな水、雨風をしのぐ場所さえ満足に得られない。この残りの90%人々の生活を良くするには、何が必要なのだろうか。『思い』だけでは、何も変わらない。お金の援助も、それだけでは不十分。実際に人々のライフスタイルを改善する、具体的な『もの(製品)』が必要なのだ。」(シンシア・スミス編『世界を変えるデザイン』“Design for the other 90%”英治出版2009年)
そのような「もの」を作るために不可欠なデザインの役割を問う展示会です。
現地の人々が製造できるゴム製義足、現地の素材で製造できる簡易ろ過装置、泥水を飲料水に変える携帯用浄水器、ストラップつき太陽光充電式照明器具、太陽の反射光を熱に買える調理器具———電気も水もない世界で人々が安全に、健康に、自立して生きていくためのデザインがそこにあります。


レジ袋をプレスして作ったシートで作成したバッグ(ゴミ問題解決と貧困層の収入確保:インド)
続いて同じ東京ミッドタウン内の21_21 DESIGN SIGHTで開催されている「ポスト・フォッシル:未来のデザイン発掘展」 で、トレンド予測の第1人者といわれるリー・エデルコートのディレクションによる自然素材のプリミティブな作品群を見ながら、化石燃料時代の次へと向かう未来のデザインへの彼女の問いかけを考えました。
「より豊かになるために、より少ないものでやっていけるでしょうか? デザインは魂を持ち、それゆえ生気に満ちたものになりうるでしょうか? 人はより意味ある消費の方法を見つけられるでしょうか? 私たちは過去と決別し、新たな未来を創造できるでしょうか?」
90%の人々が生きていくためのデザインを必要とする一方で、10%の人々は生きる力を取り戻すデザインを求めているようです。フィジカルとメンタルな生存権が東京の中心で背中合わせに展示され、そのどちらもがデザインの役割なのだと主張していました。

一瞬にして失い、回復に時間を要するのは…

5月28日にアメリカ軍の普天間飛行場の移設が閣議決定されました。またしても政治家は2枚舌をつかい、民衆は切り捨てられるのだろうか? イギリスの2枚舌に端を発するパレスチナ問題は、65年たってもまだ解決せず現地では殺し合いが続けられています。日本による沖縄の切捨ては65年後もかわらず(1872年の明治政府による琉球処分からは、なんと138年にもなるのに)、沖縄の犠牲のうえにわが身の安全を確保しようとしています。
民主党もですが反対する社民党ですら、対案としての解決方法を提示しないのはなぜでしょうか? アメリカの軍事専門家には「嘉手納飛行場があるのなら、辺野古は不要」という論もあると聞きますし、「海兵隊は抑止力にはならない。抑止力が効かなかったときのために海兵隊はある」という話も聞きます。そもそも沖縄に基地が必要だったのは(そして2倍に増えたのは)、1950年代の東西冷戦とアジア情勢によるものだったはずです。1971年の沖縄返還のときは、まだ機が熟していなかったにせよ、1989年にベルリンの壁が崩壊して20年以上がたった今こそ、そして政権交替が行われた今回こそ、基地問題を再考するチャンスだったはずです。しかも、情報収集においても移動手段においても、当時に比べ技術の進歩は著しく、60年前と同じ距離に常駐する必要性も規模も減少するのではないかと素人でも考えます。だからこそ「最低でも県外」の可能性を人々は信じたのです。

城間栄喜 紅型 踊衣装(部分、素材は米軍のメリケン粉の袋)『琉球染織「手技」の輝き』日本放送出版協会 1996年
澤地久枝の『琉球布紀行』(新潮社、2000年)に、琉球紅型に欠かせない王家の色を表す黄色の染料をとる「福木」の話があります。沖縄戦ですべてが焼けた跡の仮小屋で、後に人間国宝となる城間栄喜が紅型作家として再起の第一歩を踏み出すとき、全島から集めてまず福木を植えたそうです。福木は樹齢200年近くなったとき、黄色の極上の染料になります。「この木から染料が取れますか」という作者の問いに「あと50年か100年たったらね」という答えが返ってきたとあります。人から人へ伝えられる工芸は、その風土に根ざした植物や土壌や水とともにあり、失われるのは一瞬でも回復するには悠久の時間が必要だと知らされるエピソードです。
辺野古の海は、沖縄の大切な風土であり、ジュゴンも海がめも絶滅危惧種に指定されています。佐渡のトキの例を挙げるまでもなく、絶滅した後では遅いのです。
そして環境だけでなく、人々の信頼関係もまた同じです。

変わらない要素(経糸)と変えられる要素(緯糸)

織物は経糸(たていと)と緯糸(よこいと)で織り出されます。染色された経糸は、はじめに整経という過程で引きそろえられ、織物の長さ分が織機にセットされます。緯糸経糸の間をくぐり、柄を織り出していきます。
人生もまた織物と同じで、その人の一生分の長さの決まった経糸に、経験という緯糸を織り込んでいくものでしょうか。
30年前に三宅一生の「1枚の布」に出会いファッションデザイナーを目指して以来、マーチャンダイジングマーケティングへと活動領域を広げつつ、ファッションビジネスの成長期・成熟期、グローバリゼーションと二極化の時代を駆け抜けてきました。
若いときには見えなかった残された経糸が見えてきた今、モノづくりの将来が気にかかります。駆け出しの頃、いろいろと教えてもらった縫製工場も機屋(産地で生地を生産している工場)も生地問屋も今はなく、一方でオーバーストア状態の小売店は次々にオープンし続けます。

4月29日に「フォーエバー21銀座店」がオープンしましたが、銀座もかつての老舗から、ファストファッションやSPAの大型店が競い合う街に変わりました。開店前に並ぶ人々の中に、グローバルな低価格競争を続けるファッション製品が、生産国における環境破壊と過酷な労働によってもたらされていることを知る若者がどれだけいるのだろうか。手に入れる安さの代償がどれほど大きいか、彼らは知っているのだろうか。
ファッションは物欲刺激型の使い捨て消費から持続可能な共生型消費へと方向転換できるのだろうか。
地球という経糸に、人々の生き方を緯糸として織り込んで作られるのが社会であるなら、人々が生き方を変えることで、社会は変えられるはずです。
変わらない要素(経糸)に変えられる要素(緯糸)を織り込むことで、全体(柄)が変わってくる、織物から学んだ原理です。